聖書

Keywords: 聖書, 2世紀, 397年, アッラーフ, イエス・キリスト, イスラム共同体, イスラム教, インジール

聖書せいしょ)とは、ユダヤ教キリスト教イスラム教において宗教的意義をもつ聖典とされる文書群。ユダヤ教の聖書は、古代に共同体の間で集積された唯一神とユダヤ人との歴史的関係(契約)を伝える文書群である。キリスト教では、ユダヤ教の聖書を旧約聖書と位置付け、これに新約聖書を加えたものを聖書とする。イスラム教ではユダヤ教の聖書にあたるトーラー律法)、キリスト教の新約聖書のインジール福音書)と、旧約聖書の詩篇を神の啓示を伝える啓典とみなし、クルアーン(コーラン)に次ぐものとしている。
日本語に定着している訳語の「聖書」は、もともとは儒教における「聖書」の転用である。英語the Bibleからバイブルとも呼ばれる。

目次

ユダヤ教

ユダヤ教の「聖書」はキリスト教が旧約聖書(Old Testament)と呼ぶ文書群をさす、正式の名前は、律法・預言者(書)・諸書(トーラー・ネビイーム・ケスビーム)である

キリスト教

right|古い英訳聖書

正典とする文書群は、教派 (宗派) や時代によって多少変化する事があった、死海文書の研究はエステル記が旧約正典に含まれた時期が遅いことを示し、ユダヤ戦争後キリスト教との差異性を打ち出そうとしたユダヤ教は、サンヘドリンの決定により当時の公用語であったギリシャ語約、七十人訳聖書の使用をやめ礼拝で用いる文書をヘブライ語またはアラム語原典をもつもののみに制約した。ヘレニズム地域のギリシャ語しか理解しないユダヤ教徒のために、七十人訳に変わる新たなギリシア語訳が作られた。

マルキオンによる旧約聖書の排除および新約聖書の範囲の極端な限定に対して、教会内からも正典化の試みが行われた。現存する最古の資料はムラトリ文書(ムラトリ正典表)と呼ばれ、2世紀頃のものと推定される。新約聖書に含まれる「書」の範囲をキリスト教内部において公式に定めたのは、397年のカルタゴ教会会議である。これに対してコンスタンティノポリス総主教庁をはじめとする東方教会はヨハネの黙示録の正典性に疑義を表し、ダマスコスのイオアンネースの時代に到るまで黙示録は正典とは見なされなかった。

東方正教会」と「ローマ・カトリック」においても旧約聖書の構成に若干の差異が存在する。

カトリックプロテスタント旧約聖書とされる文書群が違うのは、マルティン・ルターヘブライ語旧約聖書ドイツ語に翻訳した時、当時使われていたラテン語旧約聖書には含まれていない部分が存在することに気づき、それらの文書を旧約聖書の後にまとめた。後に清教徒がそれらの書を偽典だとして、旧約聖書からはずしたためである。

「旧約」「新約」の「約」とは、神との契約のことで、2世紀頃からキリスト教徒の間で呼ばれ始めた。一般的に「新約」はユダヤ教における神と人との間に立てられた契約を反古にして新たに立てられた契約と解釈された時代があり、「旧約」聖書は教典の役割を果たさないのではないかと思われているようだが、例えばマタイによる福音書の一節「天と地が消え失せるまで、すべてが成し遂げられまでは、律法から一点一画も消えることは無い」(5:18)に見るように、キリスト教徒においても旧約聖書は決して軽んじられる事のない重要な書物なのである。

 しかしながら、長い歴史の中で政治的に悪用され、ほぼ全ての章に改竄された部分があることが証明されている。発掘された原本に近しい物からその部分の本来の文章が何であるかある程度分かってはいるが、現在一般的に手に入る聖書は改竄済みのものである。

イスラム教

イスラム教の聖典クルアーン(コーラン)においては、ユダヤ教の聖書はトーラー、キリスト教の聖書はインジールと呼ばれ、それぞれが旧約聖書のモーセ五書と新約聖書の福音書に相当する。その他、クルアーンには旧約聖書の一篇である詩篇がザブールという名前で言及されているが、聖書の中のテキストの名前として名前が現れるのは以上の3つのみである。

クルアーンによれば、アッラーフムハンマドを通じてクルアーンをイスラム共同体に与え、トーラー、インジール、ザブールの確証となした、とあり、それぞれがムハンマドに時代的に先行する預言者を通じて人類に与えられた神の啓示とみなされている。従って、神の啓示と伝えるトーラー、インジール、ザブールは、クルアーンとともにイスラム教の四大啓典に数えられる。

しかしクルアーンは律法においてユダヤ教の律法規定と様々な点で食い違い、「唯一である神には親も子も存在しない」からイエス(イーサー)を神の子と認めていない、といった聖書との相違点が存在する。ユダヤ教徒やキリスト教徒はこれをクルアーンが真正の啓示でない証拠とみなして攻撃したが、これに対しイスラム教は、ユダヤ教やキリスト教は神の教えを歪めているのであり、真に正しく神に由来する言葉を完全に伝えているのはクルアーンであるとする。従って、イスラム教における聖書の扱いは、あくまで不完全ながら真正の啓示のひとつであるという立場になり、聖書の研究はクルアーン研究の補助の域を越えて行われたことはなかった。

参考文献

批判版テキスト

関連項目

翻訳聖書

その他の項目

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