民法
Keywords: 民法, 1896年, 1898年, イギリス, ギュスターヴ・エミール・ボアソナード, ドイツ民法, パンデクテン方式, フランス, ローマ法
| 通称・略称 | なし |
|---|---|
| 法令番号 | 明治29年4月27日法律89号 |
| 効力 | 現行法 |
| 種類 | 民法 |
| 主な内容 | 私法の一般法(総則、物権、債権、親族、相続) |
| 関連法令 | 利息制限法、借地借家法、商法など |
| 条文リンク | 総務省法令データ提供システム(第1編〜第3編)(第4編、第5編) |
民法(みんぽう)とは、民法典、あるいは私法の一般法のことをいう。
前者の意味で用いられるのが一般的である(形式的意義における民法、狭義の民法)が、諸々の法規範のうちの一定領域を画して、その範囲のものを「民法」と総称することもある(実質的意義における民法、広義の民法)。
| 目次 |
日本の民法
形式的意義における民法(民法典)
形式的意義における民法とは、制定法である「民法」という名の法律、いわゆる民法典のことをいう。具体的には、明治29年法律第89号の別冊として編成された民法第一編第二編第三編(総則、物権、債権)及び明治31年法律第9号の別冊として編成された民法第四編第五編(親族、相続)の形式上二つの法典が民法典である。全体が1898年7月16日から施行された。その後、日本国憲法の制定に伴い、その精神に適合するように(特に家制度の廃止など)後2編を中心に根本的に改正された。
以上のように、民法典は、形式上は明治29年の法律と明治31年の法律の二つの法律から構成されると理解されており、市販の六法全書なども両者を別の法典を構成するものとして扱うことが多かった。これに対し、法制執務上は、後者は前者に条文を加える旨の改正法であり、民法典は形式上も一つの法典であるとする立場が採用されていた。
この点については、口語化と保証制度の見直しを主な目的とした民法の一部を改正する法律(平成16年法律第147号)が施行されたことに伴い民法の目次の入換えがされ、入換後の目次が一体となっていることから、今後は一つの法典として理解することになると思われる。
実質的意義における民法
民法典の中に若干異質な規定(例えば民法第84条のような刑罰規定)があること、および、民法典以外にも民法典中の規定と等質ないし極めて近接した性格の事柄を規律対象とする法規範が存在することから、このような概念が立てられる。
この場合、「市民生活における市民相互の関係(財産関係、家族関係)を規律する法」として、民法典の諸規定に加え、不動産登記法・戸籍法などの諸法もここでいう「民法」に含まれるものとされる。
ただし、いかなる特別法がこの「民法」に含まれるのか、必ずしも明確な基準があるわけではなく、学者によりその説く範囲は異なっている。そのため、この概念区分の実益に疑問が呈されることもある。
民法典の構成
法典の編成は、いわゆるパンデクテン方式を採用している。全1044条。講学上は、第1~3編を財産法、第4、5編を家族法として扱う(ただし、第4、5編をまとめて「家族法」とすることの問題点につき、家族法の項目を参照)。
財産法の構成
財産法が対象とする法律関係に関するルールは、所有関係に関するルール(所有権に関する法)、契約関係に関するルール(契約法)、侵害関係に関するルール(不法行為法)に分けられる。このうち後2者を統合して、特定の者が別の特定の者に対し一定の給付を求めることができる地位を債権として抽象化し、残りについて、物を直接に支配する権利、すなわち特定の者が全ての者に対して主張できる地位である物権という概念で把握する構成が採用されている。
そして、債権として抽象化された地位・権利に関しては、債権の発生原因として契約法にも不法行為法にも該当しないものがあるため、そのような法律関係に関する概念が別途立てられる(事務管理、不当利得)。物権に関しても、所有権を物権として抽象化したことに伴い、所有権として把握される権能の一部を内容とする権利に関する規定も必要になる(制限物権)。また、物権と債権に共通するルールも存在する(民法総則)。
このような点から、財産法は以下のように構成されている。
家族法の構成
家族法のうち、親族関係に関するルール(親族法)は、夫婦関係を規律するルール(婚姻法)、親子関係を規律するルール(親子法)がまず切り分けられるが、その他の親族関係についても扶養義務を中心としたルールが必要となる。また、親権に関するルールは親子法に含まれるが、編成上は親子法から切り分けられて規定されている。これは成年後見制度と一括して制限行為能力者に対する監督に関するルールとして把握することによるものと考えられる。
相続法については、主として相続人に関するルール、相続財産に関するルール、相続財産の分割に関するルール、相続財産の清算に関するルールに分けられる。その他、遺言に関して、遺言の内容が必ずしも相続に関することを含まないこともあり、いわゆる遺言法を相続法と区別する立法もあるが、日本では相続法に含めて立法化しており、それに伴い相続による生活保障と遺言との調整の観点から、遺留分に関するルールを置いている。もっとも、これらを通じた規定について総則にまとめる方式が採用されていることもあり、法文上は、これらのルールが明確に区別されていない部分がある。
このような点から、家族法は以下のように構成されている。
- 親族法(第4編 親族)
- 相続法(第5編 相続)
関連する法律
民法典が想定する登録制度について定めた法律として不動産登記法、戸籍法、後見登記等に関する法律などが、特定の法律関係に関する民法典の特別法として借地借家法、商法、各種の労働法、割賦販売法などが、民法典やその特別法に規定する権利を実現するための民事手続法として民事訴訟法、人事訴訟法、家事審判法、民事執行法、民事保全法、各種の倒産法などがある。
日本と各国の民法の関係
いわゆる旧民法(いわゆる民法典論争により施行延期となり、そのまま施行されずに終わった、いわゆるボアソナード民法)がフランス民法(いわゆるナポレオン民法典)を範としていたのに対し、現在の日本民法は、ドイツ民法を手本にしたとされていた(これを、単に継受、あるいは法典継受という。もっとも、この時参照されたのは、制定されたドイツ民法そのものではなくドイツ民法草案である)。これに加え、大正期以後、日本法学がドイツの多大なる影響下に発展したことを受けてドイツ民法の日本法に与える影響ははかり知れない(これを、法典継受との対比において学説継受ということもある)。戦前の民法学の大家であった鳩山秀夫がドイツ民法の大きな影響を受けていたことや、日本民法学において長年にわたり第一人者であった我妻栄がドイツ民法的な思考方法で戦後日本民法の理論を構築したこともあって、現在の判例理論上のドイツ民法的な思考方法が散見される。
ところが、近年になり、日本民法は、その構成についてはドイツ民法典の構成に準じた構成がされているが、その内容についてはむしろフランス民法をベースとして構築されていることが指摘されるようになり(これは、旧民法がフランス民法を継受したものであったことのほか、民法典の起草を担当した三博士のうち、梅謙次郎と富井政章の二人の留学先がフランスであったという事情による)、学会にあってはこの観点からの民法理論の再構築がおこなわれている。この流れを牽引したのは星野英一や平井宜雄である。
なお、日本民法はイギリス民法からも若干の影響を受けている。いわゆるultra viresの法理を規定した民法43条や、Hadley v. Baxendale事件の判決で表明されたルールを継受した民法416条のほか、民法526条がそれにあたるとされるが、起草を担当した三博士の一人である穂積陳重が、最初イギリスに留学したことによる影響である。なお、穂積は、イギリス留学の途中、依願により民法学論争たけなわであったドイツに留学先を変更した。
以上のことから、日本民法は、ドイツ民法を始めとした特定の母法に基づくというよりも、多角的に比較法の参照が行われて立案されたと評価される。
関連項目
代表的な民法学者については、日本の法学者一覧を参照のこと
