原子力発電
Keywords: 原子力発電, 2004年, アメリカ合衆国, イギリス, ウラン, ウラン濃縮, エネルギー, サイエンス・フィクション, フランス
原子力発電 (げんしりょくはつでん) とは、核反応時に出るエネルギーを利用した発電、あるいはその方法。核分裂と核融合との二つの手法があるが、現在実用化されているのは前者である。
核分裂は重く大きい原子が中性子を吸収することで、原子が分裂し、中性子と熱を放出する素過程である。核燃料に中性子を放射して核分裂を起こすと、放出された中性子が次の核分裂を引き起こし、それが連鎖していき、外から中性子を放射しなくても核分裂が続く臨界状態となる。そのままにすると鼠算式に拡大しメルトダウンが起こりえるので、中性子の速度を抑える、吸収するなどして安定させる減速方式が一般的である。
設備費のかからない、反応がそもそも低速なのを中性子の反射等によって加速させる、小型原子炉については一般的に知られておらず、SF等でしか表れない。
1951年、アメリカの高速増殖炉EBR-1で行われたものが史上初の原子力発電とされる。日本に初めて導入された原子炉は、商用発電炉としては世界最初に実用化された英国製のガス冷却炉であったが、経済性の点から現在の日本では軽水炉(沸騰水型原子炉および加圧水型原子炉)が主流となっている。
日本の原子力発電はベースロード負荷への電力供給を専門としており、需要に合わせた電気出力の増減は原則的に行っていない。原子炉で負荷追従運転を行うと、原子炉の強度を著しく損なうばかりでなく、即応性も悪く、運転そのものが不安定になってしまう。そんな中でもいくつかの国で研究は行われ、現在フランスでは商用原子炉で負荷追従運転が認可されている。
2004年現在、日本における定格最大出力電力の約30%、電力量の約50%を担っている。一次エネルギーとしての原子力エネルギーは電力事業のみであり、日本での一次エネルギーに対する割合は15%程度となっている。原子力エネルギーにおいて、世界で最も高いウェートを示している国はフランスであり、国の一次エネルギーとしては40%、発電電力量としては75%を超えている。このように、原子力エネルギーが高い割合を占める国では、揚水発電や電力輸出入を活用している事が多い。
また、原子力発電の燃料はウランであるが、ウラン濃縮を行えば必然的に劣化ウランが生じ、使用済み核燃料にはプルトニウムなどの核廃棄物が含まれる。プルトニウムは核弾道ミサイルなどに転用することが技術的に可能であり、劣化ウランは劣化ウラン弾として、また核廃棄物をそのまま汚い爆弾として軍事転用が可能である。また戦時下では攻撃目標になる。
原子力発電所では核分裂により高レベル放射性廃棄物が発生してしまう。これは生活の場から隔離する必要があり、多重の外に漏らさない仕組みの上大深度地下に埋蔵し、後は管理しないという深地層処分が策定されている。
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利点
現行の原子力発電には以下の利点が挙げられる。
- 安定した電力供給が可能
- 地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の排出が少ない
- 使用する燃料が極端に少なくて済む
- 燃料の中東依存度を減らすことが出来る
- 核燃料サイクル等によるウラン238の有効利用や海水からのウラン採取が実現すれば、燃料は非常に豊富
- 経済性が高い
- 再処理により準国産エネルギーを実現できる
- 技術力があることがアピールできる
- 軍事転用が可能
- 酸素を必要としない
問題点
現行の原子力発電には以下の問題点が指摘されている。
- 重大事故は周辺環境に多大な被害を与え、その影響は地球規模に及ぶ
- 毒性が強く、放射性物質である核廃棄物を作り出す
- 貯蔵中核廃棄物の最終処分地が選定されていない。
- 地殻中のウラン235のみの利用を考えた場合、資源がそれほど豊富なわけではない
- ウラン資源の可採埋蔵量に由来する資源枯渇問題
- 軍事転用の制約に関わる国際社会への配慮
- 準国産エネルギー開発及び再処理技術実用化の凍結
- 起動停止の所要時間が長い(通常停止)
- 炉の特性上、負荷時運転を行えない
- 火力発電所と比べ、施設建設に多大なエネルギーを使う
- 地質学的側面から、立地場所が限定される
特に日本では、広島・長崎等の歴史的契機により放射能や放射線と言う言葉にたいして嫌悪感を抱く場合が多く、建設時に地域住民の反対運動が起こることが多い。しかし、原子力発電所ができると、地元には一定の雇用が期待できるほか、電源立地特別交付金、固定資産税、法人税などの税収も確保できる。このため、地域住民が賛否を巡って対立することも多い。
1kWhあたりの発電コスト
平成11年に通商産業省資源エネルギー庁が発表した試算によれば、1kWhあたりの発電コストは以下の通り。
- 原子力 5.9円
- LNG火力 6.4円
- 石炭火力 6.5円
- 石油火力10.2円
- 水力 13.6円
出典:総合エネルギー調査会原子力部会(第70回)資料3:原子力発電の経済性について(平成11年12月)
なお、この原子力発電費用に関する試算では廃炉の費用は含まれているが、原子力発電所の建設において特徴的な、地元対策に必要な費用は含まれていない。また、他の発電方式にはない破局的な事故時の損害については同様に含まれていない。
1kWhあたりの二酸化炭素排出量
温室効果の原因となる二酸化炭素の排出量が少ないことは、原子力発電の利点の一つとされている。電力中央研究所が平成12年に発表した試算によれば、原子力をはじめとする各種発電方式について、発電所の建設から廃止までの発電量と二酸化炭素排出量を考慮した、1kWhあたりの二酸化炭素排出量は以下の通り。
- 原子力 22g
- 水力 11g
- LNG火力 608g
- 石油火力 742g
- 石炭火力 975g
出典:(財)電力中央研究所「ライフサイクルCO2排出量による原子力発電技術の評価」研究報告:Y01006(平成13年8月)
原子力発電では核分裂反応に起因する二酸化炭素の排出は全くないが、発電所の建設・運用・廃止や燃料の生産・輸送、廃棄物の処分等に起因する二酸化炭素の排出も上記の試算には含まれているため、若干の排出が見られる。この点は水力発電も同様である。
発電所建設費の例
- 原子力 泊発電所3号機 約2900億円 91.2万kW(出力)平成20年10月運転開始
- 水力 神流川発電所 5250億円 270万kW(最大出力)1997年5月工事開始、2011年7月工事完了予定
- 天然ガス 市原発電所 約100億円 11万kW (出力)平成16年10月運転開始
- 石炭 敦賀火力発電所2号機 1275億円 70万kW(出力) 平成12年9月運転開始
