偽薬
Keywords: 偽薬, デンマーク, ブドウ糖, ホメオパシー, 乳糖, 二重盲検法, 副作用, 根拠に基づいた医療
偽薬(ぎやく、プラセボ、プラシーボ、placebo)は、本物の薬のように見える外見をしているが、薬として効く成分は入っていない、偽物の薬のことである。成分としては、少量ではヒトに対してほとんど薬理的影響のないブドウ糖や乳糖が使われることが多い。Placeboはラテン語で、「私は喜ばせる」の意。
- 「プラセボ(placebo)」は、広義には「薬」以外にも、本物の治療のように見せて実質上の治療の機序が含まれないあらゆる治療手段を指すため、厳密にはより広い意味の言葉である。placebo surgeryが行われることすらある。
偽薬は、偽薬効果を期待して処方されることもあるが、本物の薬の治療効果を実験的に明らかにするため、比較対照試験で利用されることが多い(その代表としては二重盲検法がある)。
偽薬を処方することに対する倫理的な批判もあるため注意が必要である。
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偽薬効果
偽薬効果(ぎやくこうか)、プラセボ効果とは、偽薬を処方しても、薬だと信じ込むことによって何らかの改善がみられることを言う。この改善は自覚症状に留まらず、客観的に測定可能な状態の改善として現われることもある。原病やその症状自体の改善というよりは、「薬を飲んでいる」ことによる精神的な安心感の方が目的となることもあり、このような単なる安楽は通常偽薬効果には含まれないが、その区別が難しいこともある。
偽薬効果が存在する可能性は広く知られている。特に痛みや下痢、不眠などの症状に対しては、偽薬にもかなりの効果があるとも言われており、治療法のない患者や、副作用などの問題のある患者に対して安息をもたらすために、本人や家族の同意を前提として、ときに処方されることがある。医師法にも、暗示的効果を期待し、処方せんを発行することがその暗示的効果の妨げになる場合に、処方せんを処方する義務がないことが規定されている。
一方で、偽薬に一定の効果があるかどうかについては、常に疑問視する意見もある。2001年にNew England Journal of Medicineに掲載されたHrobjartssonらの論文は、治療手段としての偽薬の効果が限られていると主張し、反響を呼んだ。この論文で著者らは、過去に行われた偽薬と無治療との比較試験100編以上の論文をレビューして、痛みの症状は偽薬によって若干改善されるが、それ以外では、偽薬が自覚症状や他覚症状を改善する証拠はなかったと述べている。
「偽薬効果は客観的にも有意な改善が見られ、積極的に用いて良い治療法である」「客観的な改善はなくても自覚的・精神的な安息が得られるから認められるべきである」「偽薬には一切症状を改善する効果はない」あるいは、「いずれにせよいかなる場合も倫理的に認められない治療法である」など、様々な意見が対立しているが、2004年現在、少なくとも標準的な治療法とはなり得ていない状況といえる。
デンマークで行われたある調査では、臨床医の30%が偽薬効果による客観的な症状の改善を信じており、86%が最低1度偽薬を使ったことがあり、46%が倫理的にプラセボの使用を認めると考えていた。
一方で、薬の臨床試験における偽薬の役割は重要である。薬を飲んで治療効果があったとしても、それが偽薬効果によるものなのか、本当の薬理作用によるものなのかを区別する必要がある。治療効果を調べる際には、被験者の同意の下、出来るだけ偽薬を用いた比較実験を行うことが、学問上の研究の信頼性を得るためには必要とされている。
ノセボ効果
特に、偽薬によって、望まない副作用(有害作用)が現われることをノセボ効果 (ノーシーボ効果、反偽薬効果、nocebo effect) という。副作用があると信じ込むことによって、その副作用がより強く出現するのではないかと言われている。
参考文献
- Asbjorn Hrobjartsson and Peter C. Gotzsche, Is the Placebo Powerless? - An Analysis of Clinical Trials Comparing Placebo with No Treatment, New England Journal of Medicine, Volume 344:1594-1602.
- Asbjørn Hróbjartsson, The Use of Placebo Interventions in Medical Practice—A National Questionnaire Survey of Danish Clinicians, Evaluation & the Health Professions, Vol. 26, No. 2, 153-165 (2003)
