三次方程式

Keywords: 三次方程式, 1の原始累乗根, ジェロラモ・カルダーノ, 一次方程式, 二次方程式, 五次方程式, 代数学の基本定理, 代数方程式, 共役複素数, 冪乗

三次方程式とは、次数が 3 であるような代数方程式、即ち、

a_3 x^3 + a_2 x^2 + a_1 x+ a_0 =0 \quad (a_3 \ne 0)

の形に帰着できる方程式のことである。ルネッサンス期以前には、アラビアのカイヤームなどによって考察されたが、(ほぼ)完全な解の公式はヨーロッパのカルダーノらによって発見された。

目次

一般解の導出

以下、この方程式を一般的に解くプロセスを紹介する。方程式の両辺を a3 ≠ 0 で割ることにより、最高次係数を 1 にすることができ、またそれによって一般性を失うことはないので、以下では常に最高次係数が 1 の物のみを扱う。

x^3 + A_2 x^2 + A_1 x + A_0=0 \quad (A_2=a_2/a_3,\, A_1=a_1/a_3,\, A_0=a_0/a_3)

1 の原始立方根の導入

まず、一番単純な三次方程式、

x3 + A0 = 0

を解く事を考える。A0 = -1 であるとき、解は1 の原始立方根冪乗に等しい。一般の A0 に対しては、累乗根の定義から直接に、

x = \omega^m \sqrt[3]{-A_0} = -\omega^m \sqrt[3]{A_0}

を得る。ここで ω は 1 の原始立方根を表す。ω は、二次方程式 t2 + t - 1 = 0 の根の任意の一方である。いずれの一方の根を ω として選んでも、ω の共役は他方の根、したがって 1 の原始立方根で あり、ちょうど ω2 に等しい。ここでは、

\omega = \frac{-1+\sqrt{3}\,i}{2}

としておく。

二次項のない場合

A2 = 0 で見かけ上二次の項がない三次方程式、即ち、

x3 + A1x + A0 = 0

を解く事を考える。まず、A0 = 0 のときには左辺は容易に因数分解できて、x = 0 は根であり、残りの根は x2 + A1 = 0 を解くことで得られる。逆に x = 0 が根であれば代入することにより A0 = 0 でなければならないことがわかる。

よって以下 A0 ≠ 0 とし、0 ≠ x = u + v と置いて式を変形すると、

x3 + A1x + A0 = 0
\iff (u+v)^3+A_1(u+v)+A_0=0
\iff u^3+v^3+3u^2v+3uv^2+A_1(u+v)+A_0=0
\iff u^3+v^3+(3uv+A_1)(u+v)+A_0=0
\iff (u^3+v^3+A_0)+(3uv+A_1)(u+v)=0

となる。ここで、方程式が成り立つには、最終行の左辺第一項と第二項が同時に 0 になれば良い。従って、もとの三次方程式を解くことは、方程式系

\begin{cases}   u^3+v^3=-A_0 \\   3uv=-A_1 \end{cases}

を解く事と同値である。今、U := u3, V := v3 と置けば、

\begin{cases}   U+V=-A_0 \\   UV=-(A_1/3)^3 \end{cases}

と書ける。この U, V を見つけることは、分解方程式 と呼ばれる次の方程式

X2 + A0X − (A1 / 3)3 = 0

を解くことと同値である(根と係数の関係)。即ち、二次項がない三次方程式は、二次方程式に帰着できるのである。そして、これを解けば、

X = -\frac{A_0}{2}+\sqrt{\frac{{A_0}^2}{4}+\frac{{A_1}^3}{27}}, \ -\frac{A_0}{2}-\sqrt{\frac{{A_0}^2}{4}+\frac{{A_1}^3}{27}}

となり、この 2 つの解がそれぞれ U, V となる(順序は逆でも構わない)。

さて、u3 = U, v3 = V であったが、これを三次方程式だと単純に考えれば、

u = \sqrt[3]{U},\, \omega\sqrt[3]{U},\, \omega^2\sqrt[3]{U}; \  v = \sqrt[3]{V},\, \omega\sqrt[3]{V},\, \omega^2\sqrt[3]{V}

となるが、このままでは、解 x(=u+v) の個数は 9 個になってしまう。代数学の基本定理によれば三次方程式の解は高々 3 個であるはずだから、残りの 6 個は、連立方程式の第 2 行を 3 乗したことによる無縁根だと考えられる。無縁根か否かの判断は、uv = -A1/3 から行うことができる。即ち、u はそのまま 3 つの解を与えるだとすれば、もう一方の v はこの式より決定することになるのである。従って、

x = \omega^m\sqrt[3]{U}+\omega^{3-m}\sqrt[3]{V}

(m = 0, 1, 2) がこの二次項のない三次方程式の根の全てである。U, V を係数 A1, A0 で書き戻せば、

x = \omega^m\sqrt[3]{-\frac{A_0}{2}+\sqrt{\frac{{A_0}^2}{4}+\frac{{A_1}^3}{27}}}+\omega^{3-m}\sqrt[3]{-\frac{A_0}{2}-\sqrt{\frac{{A_0}^2}{4}+\frac{{A_1}^3}{27}}}

という根の公式を得る。

一般の場合

A2 が 0 でない一般の場合の解法について考える。実は、二次方程式でいう平方完成に似た手法で、三次方程式の二次項は消去することができる。尚、一般に、n多項式n - 1 次項は、t = x + an-1 / n と置くことによって消去することができる。

さて、新たな変数 tt = x + A2 / 3 として用意して、方程式を t に関するものに変形する。つまり、

x3 + A2x2 + A1x + A0 = 0

x = t - A2 / 3 を代入して整理すれば

t^3 + \left(-{{A_2}^2 \over 3} + A_1\right)t + \left({2{A_2}^3 \over 27} - {A_1A_2 \over 3} + A_0 \right) = 0

となる。ここで、表記の都合上

p := -{{A_2}^2 \over 3} + A_1,
q := {2 {A_2}^3 \over 27} - {A_1 A_2 \over 3} + A_0

とおくことにする。

そうすると、元の方程式は t3 + pt + q = 0 という二次項がない形の三次方程式に帰着されたわけであり、前述のようにこの t に関する三次方程式は解くことができて、その根は

t = \omega^m\sqrt[3]{-\frac{q}{2}+\sqrt{\frac{q^2}{4}+\frac{p^3}{27}}}+\omega^{3-m}\sqrt[3]{-\frac{q}{2}-\sqrt{\frac{q^2}{4}+\frac{p^3}{27}}}

となる。従って、

x = \omega^m\sqrt[3]{-\frac{q}{2}+\sqrt{\frac{q^2}{4}+\frac{p^3}{27}}}+\omega^{3-m}\sqrt[3]{-\frac{q}{2}-\sqrt{\frac{q^2}{4}+\frac{p^3}{27}}} - \frac{A_2}{3}

である。これで三次方程式が一般に解くことができた。あとは、p , qA2, A1, A0 の式に書き戻せば、方程式の根がその係数によって書き表され、根の公式を得たことになるわけである。しかし、そうして表した場合、式が非常に煩雑になってしまうので表記の都合上ここまでとする。

一般的解法にまつわる話

上の公式は、カルダノの公式と呼ばれる。そう言われるのは、ジェロラモ・カルダーノが発表した公式であるからだが、実際にこの公式を発見したのはニコロ・フォンタナ(タルタリア)という人物だと言われている。フォンタナはカルダノに、絶対に他言しない約束で三次方程式の一般的解法を教えたが、カルダノはその約束を無視して解法を発表してしまった。フォンタナは自分が発見したことを主張したが、その主張は取り下げられ、現在でも、公的にはカルダノが発見したことになっている。

関連項目

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