サンスクリット
Keywords: サンスクリット, 13世紀, 4世紀, 5世紀, SA, アタルヴァ・ヴェーダ, イスラム王朝, インド, インド・イラン語派
サンスクリット (Sanskrit、संस्कृत) は、古代・中世に、インド亜大陸において公用語として用いられていた言語である。現在のインドの公用語の一つでもあるが、古典言語であるため現在日常語としての話者はほとんどいない。
日本では、一般には言語であることを明示してサンスクリット語と呼ばれる。
また、古くは梵語(ブラフマンの言葉)とも呼ばれた。ISO631-1コードはsa。
John_3_16_Sanskrit_translation_grantham_script.gif
| 目次 |
言語としてのサンスクリット
歴史
インド・ヨーロッパ語族(印欧語族)・インド・イラン(アーリア)語派に属し、狭義には紀元前5世紀~紀元前4世紀にパーニニがその文法を規定し、その学統によって整備された古典サンスクリット(古典梵語)のことを指す。
広義には、リグ=ヴェーダ(最古部は紀元前1500年頃)に用いられていた言葉にまで溯り、後の時代の、仏典などが記された仏教混交サンスクリットをも含む。
そのように古典時代から広く使われて多くの文献を残しているため、サンスクリットは、ヨーロッパで古典学術用語として栄えたラテン語・ギリシャ語とともに「三大古典印欧語」と称されることもある。
釈迦の時代など日常の生活においてインド各地の地方語(プラークリットと呼ばれる。バーリ語など)が一般に用いられるようになって以降も、サンスクリットは逆に公用語として普及し、宗教(例:ヒンドゥー教・仏教)・学術・文学等の分野で幅広く長い期間に渡って用いられた。
サンスクリットを公用語としたことがわかっている王朝
13世紀以降のイスラム王朝支配の時代~ヒンドゥスターニー語(→ウルドゥー語、ヒンディー語)の時代、大英帝国支配による英語の時代を経てその地位は相当に低下するが、実は今でも知識階級において習得する人も多く、学問や宗教の場で現代まで生き続けている。
発音と文法
サンスクリットの表記には時代・地域によって多様な文字が使用された。例えば日本では伝統的に悉曇文字(いわゆる『梵字』)が使われてきたし、南インドではグランタ文字による筆記が、その使用者は少なくなったものの現在も伝えられている。
ここでは最も一般的なデーヴァナーガリー文字を用いることとする。
| अ a | आ aa | इ i | ई ii | उ u | ऊ uu | ऋ R | ॠ RR |
| ऌ L | ॡ LL | ए e | ऐ ai | ओ o | औ au | अं aM | अः aH |
- 記号は標準的でないが、Wikipedia 日本版では一応この正書法をとる(京都・ハーバード方式)。
| 無声・無気 | 無声・帯気 | 有声・無気 | 有声・帯気 | 鼻音 | |
| 軟口蓋音 | क ka | ख kha | ग ga | घ gha | ङ Ga |
| 硬口蓋音 | च ca | छ cha | ज ja | झ jha | ञ Ja |
| 反舌音 | ट Ta | ठ Tha | ड Da | ढ Dha | ण Na |
| 歯音 | त ta | थ tha | द da | ध dha | न na |
| 舌音 | प pa | फ pha | ब ba | भ bha | म ma |
| 半母音 | य ya | र ra | ल la | व va | |
| 歯擦音 | श za | ष Sa | स sa | ||
| 気音 | ह ha | ||||
- 文法
名詞は男性、女性、中性に分かれ、単数、両数(双数、dual)、複数の区別と格に応じて曲用する。格は主格、呼格(よびかけ)、対格、具格(…によって)、為格(…の為に)、奪格(…から)、属格(…の、に属する)、処格(…で、において)の八つある。つまり、一つの名詞は24通りの曲用を考えうる。
曲用は規則的なものに限っても性・語幹の末尾によって多くの場合に分かれ、複雑である。
動詞の活用は、動詞の種類によって伝統的に10種に分けられている。注記すべきこととして、能動態と受動態の他に、反射態という、行為者自身のために行われることを表す態が存在する。また、アオリストも存在する。
著名な文学・哲学・宗教文献
- ヴェーダ関係(シュルティ、天啓文学)
- ヴェーダ聖典
- リグ・ヴェーダ
- サーマ・ヴェーダ
- ヤジュル・ヴェーダ
- アタルヴァ・ヴェーダ
- ブラーフマナ
- アーラニヤカ(森林書)
- ウパニシャッド(奥義書)
- チャーンドーキヤ・ウパニシャッド
- ブリハッドアーラニヤカ・ウパニシャッド
- アイタレーヤ・ウパニシャッド
- イーシャー・ウパニシャッド
- カウシータキー・ウパニシャッド
- ケーナ・ウパニシャッド
- ターイッティーリャ・ウパニシャッド
- カータカ・ウパニシャッッド
- シヴェーターシヴァタラ・ウパニシャッド
- ヴェーダ聖典
- 叙事詩関係
- マハーバーラタ
- バガヴァッド・ギーター
- ナラ王物語
- ハリ・ヴァンシャ
- ラーマーヤナ
- マハーバーラタ
- ダルマ・シャーストラ関係
- マヌ法典
- ヤージュニャヴァルキヤ法典
- アルタ・シャーストラ(実利論)
- カーマ・スートラ
- ナーティヤ・シャーストラ(演劇論)
- ヴァーストゥ・シャーストラ(建築論)
- 哲学関係
- ヴァイシェーシカ・スートラ
- ヨーガ・スートラ
- ニヤーヤ・スートラ
- ミーマーンサー・スートラ
- ブラフマ・スートラ
- サルヴァ・ダルシャナ・サングラーハ(全哲学綱要)
- カーリダーサによる戯曲
- その他仏教文献(法華経など。ただし漢語から復元されるものが多い)
梵語 - 仏教での伝播、日本での一般認識
仏教では最初、ヴェーダ文献の聖性を否定し、より民衆に近い水準の言葉で文献が書かれたため、サンスクリットが使われることはなかったが、大体紀元の前後を境にして徐々にサンスクリットが取り入れられ、仏教の各国への伝播とともに、サンスクリットも東アジアの多くの国々へ伝えられた。
サンスクリットの日本への伝来は非常に古く、すくなくとも真言宗の開祖空海まではさかのぼれる。日本におけるサンスクリットの文字は、一般的なデーヴァナーガリーとは多少異なる悉曇(しったん、シッダーム)文字である。
日本語の五十音の配列は、サンスクリットの音韻学の影響を受けているという説が有力である。
日本語のうちで仏教用語に当たるものの多くはサンスクリット語源であり("僧"、"和尚"、南無阿弥陀仏"、"卒塔婆"など無数にある)、"檀那"、"嚏"など多少日常語化しているものもある。
また、経典のうち、陀羅尼(だらに、ダーラニー)、真言(マントラー)は漢訳されず、サンスクリットを音写した漢字で表記され、サンスクリット音のまま直接読誦される。陀羅尼は現代日本のいくつかの文学作品にも登場する(泉鏡花「高野聖」など)。
外部リンク
- サンスクリット - ここの説明がもっとも詳しく専門的です。
- 梵楽庵
- Apte Sanskrit Dictionary Search
